『おやおや^^ 結構煉瓦目当てでこのツアーに参加される方も多いのですよ^^』
そう言ってボランティアガイドさんは、ツアーの後列で常に私たちを見守っていた御二方を紹介するのだ。
私は一度お見かけしてる横須賀の煉瓦研究の先生さんっす^^
少し照れながらも先生は軽いご挨拶をみんなにしたのです。
さて、煉瓦の刻印探しに没頭しすぎて少々夕実っちを置いてきぼりにしてしまいましたw
とは言え彼女もそれなりに楽しんでいるようでホッと胸を撫で下ろす。
さあ仕上げです。
細工は流々ごろうじろってやつですかね^^
夕実っち洗脳計画&今後の下地作りの為に張り切っちゃおうかと思いますっす♪
第670話、夏島編☆ファイナルスタートっす^^
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私はせっかくだからと電灯所跡があるところまで行ってみたんだけどお、その先はバッサリと崖になってました^^;
どうやら戦中戦前の航空隊基地造成の影響で削り取られて遺存してないようっす^^;
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さてこの後は再び今来たルートへと戻ることになるのですが、
『ではではここから少し下ってみましょうかね^^ 足元が非常に心もとないので皆さん注意深く降りてくださいね^^』とガイドさん。
どうやら尾根を伝うルートから少し脱線するみたいっす。
もうワクワクが止まらない!
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そこは『副観測所跡』と言うところへと向う小道だったのです。
するとーーー
『ええっと皆さん^^ 実はここには多くの煉瓦の刻印が打たれた煉瓦片がそこかしこに転がっていますので見てくださいな^^』と、
ガイドさんが右に左に足元を指差しながら先導するんすよ。
うひゃー!
これは最高っす!ってな感じでさっそく私は夕実っちと共に探しまくりです!(夕実っちには無理矢理つきあってもらうw)
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ぐはー!
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ぐおおおおっ!
ビックリするほど刻印の形状が違うものばかり。
後ろでは先生がマジマジと観察してるっす。
先生と言えども、そうそうここには来れないのかな~?
(ちなみにこの夏島貝塚と呼ばれる場所は『重文』 つまりは国指定の重要文化財っす^^ こっそり侵入する輩もいるでしょうが大変重要なとこだったりするのでそこんとこヨロシクw)
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ニョキニョキと草むらに生えてるのは決して植物じゃないっす。
これは砲座の跡っす^^
砲座を固定していたボルト跡ですね^^
さあそしてそして、ようやく到着。副観測所跡!
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そこにはこんなパネルが立てかけられていたっす^^
それを見た夕実っちが少し気になったような感じで私に聞いてきた。
『ねえねえ琴音っちい。フランス積みとかイギリス積みって書いてあるけど、なんなのこれ???』
それは古煉瓦の積み上げ方。
簡単にだけれど、煉瓦面の向きの揃い方によってそれぞれの名称があるんだよと教えてあげた^^
(煉瓦は長方形ですよね。その側面には短い部分の『小口』 長い部分の『長手』が存在するわけなんですがーーー
イギリス積みなら『長手・長手・長手・・・・』という段と『小口・小口・小口・・・』という段が交互に段々となって積み上げられていると覚えておけばまあ・・・間違いないでしょうかw
フランス積みは『長手・小口・長手・小口・・・』と言う段が段々に積みあがってると単純に思ってくれればいいかしらw)
積み方によってまた時代が違ってくるんだよ?なんてな感じで優しくやさーーーーしく教えてあげましたっす☆
『ほえ~!煉瓦に積み方があるなんて知らなかったですよお^^
煉瓦って知ってみると色々あるんだね^^』
ふふふふ。どうやら夕実っちは私のペースに美味い具合にのっかってきてくれてるようだw
順調!順調!
ここで私はもうちっと畳み掛ける!
恋愛も授業も一方的ではダメとどこかの偉い人が言ってた。
ウンウンと話を聞いてもらうだけではダメだと。
人の興味を引き出すには『逆質問』をして、考えさせるのがいいんじゃね?って^^
っつーことで逆質問。
『じゃあ~夕実っち~^^ この副観測所跡の積み方は何積みかなあ~☆』
むう・・・と折り曲げた人差し指を下唇に当ててじっくりと煉瓦の壁を観察する夕実っち。
パッと見てすぐわかるでしょ?とは思ったっすけど、そこは我慢我慢^^
彼女は『長い面がずっとあって・・・、小さい面がずっとあって・・・』と、やたら長く考察中。
---1分経って
『わきゃー♪ たぶんコレってイギリス積みですう☆』と答えてくれた。
『せ・い・か・い・☆』と、クイズ番組の司会者みたいに私も受け答え。
すると
『わきゃー♪大当たりですう☆』と喜んでくれた^^
・・・私はこの天然っぷりに、
早くしっかりした彼氏を彼女に宛がわないと、この先きっと絶対
悪い男に騙されるんじゃないかと改めて思わされた^^;
彼女は親友。
変な人に騙されて涙なんか流して欲しくない。
そんなのは見たくもない。
それだったらうちのお兄ちゃんならまだなんとかなるだろうと、昔から暗躍・策謀を企てているのは、私だけの胸のうちの話ってことにしときましょうっす^^
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副観測所跡をじっくり堪能した私たちツアーグループ。
その後は
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再び尾根のルートへと舞い戻りました。
そこから目指す場所は、なんでもこの先に
『夏島の煉瓦と言ったらここしかない!』と断言するガイドさんのお話。
---まあ、私とツアーの煉瓦好きオジサマ達は知っていたことなんですけどねw
---途中
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コンクリがむき出しのところでガイドさんが説明を始めたっす。
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そこには下へと繋がる細い穴ぼこが開いていたっす。
よくよく見るとその穴の側面は、普通の煉瓦よりも薄い煉瓦が段々になって連なってましたっす^^
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『ここってなんですかぁ?』と夕実っちが聞いてきた。
私が多分何々じゃね?って答えようと思っていたら・・・
私よりもガイドさんよりもいち早く、
『ここは弾薬庫の通気口だねえ^^』と、ツアー参加のオジサマが答えてくれちゃったw
『ほえほえほえ~? 弾薬庫? 通気口ですかあ~』と関心する夕実っち。
さすがこの手のツアーに参加されてる人たちっす^^;
時たまガイドさんも『先に言われちゃいましたねアハハw』と、びっくらしてたしねえ^^;
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そしていよいよ中々自分の目ではお目にかかる機会が少ない場所へとやってきたっす^^
そこは、夏島のフェンス出入り口から進んで鉄パイプの階段を登り、やっとこさ到着した夏島のメイン広場みたいなとこからすぐの場所だった。
正直、ここを見たくてツアーに参加したと言っても過言じゃないっすw
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先ほどの副観測所への小道と同様に、ここもちょっと脇に逸れたところに存在するっす^^
私たちはゆっくりと尾根道からそこへと近づくのでした。
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ぐううううおおおおおお!
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赤い煉瓦の綺麗なアーチがお出迎えっす!
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『ここは見物OK。中も覗いてOKですので皆さん自由に入って見てみてください^^』というボランティアガイドさんのお達しに、
オッサンたち(いや、オジサマ連中)の先頭を切っていざ侵入突入っす!
・・・え?夕実っち?
ああ知りません。そんなの置いてってさっさと入ってみましたw
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天井は小口積みかあ!
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ふと部屋の奥を見やるとボランティアガイドさんがパネルを片付けていた。
どうやら普段はこの煉瓦の小部屋は、ツアーの展示パネルの物置小屋となっているみたいっす^^
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その後はもう!舐めるようにじっくり煉瓦観察☆
刻印とかはどうでもええ。
ただただ煉瓦の造形美に一人酔っていた。
---ところで夕実っちはと言うと?
『わきゃー♪ 煉瓦が斜めにくっついてるのに落っこちてこないんだから不思議ですうー^^』と、
アーチ部分の煉瓦や天井部の煉瓦を見て不思議がってたっす^^;
まあ、とりあえずOKっつーことで^^;
・・・そして私はここで『プランA』を発動することにした。
私は夕実っちのすぐ傍でスマフォを取り出して『ある人物』へとメールするのを彼女におもいっきりアピールしたのだった。
それに気づいた夕実っちは
『え~っと琴音っち? いったい誰にメールしてるの?』と聞いてきた。
すかさず私は『まあいいじゃん^^』とはぐらかす。
するとーーー
速攻返信が帰ってきた。
私はそれをわざと夕実っちに背中を見せながらメールをこっそり読むアピールをしてみせる。
『ええ?誰々?誰とメールしてるの琴音っちい^^;』と、彼女は私のメール相手が気になるよお~という感じで、せっついてきた。
---しめしめっす☆
私はスマフォの画面を見つめながら『ほほ~!』『へえ~そうなんすねえ^^』と、わざと声のボリューム上げて呟いてみるのです。
彼女に興味を抱かせたと思った頃合を見計らって、
私はスマフォの画面を彼女に見せつつ、もったいぶりながら誰々とメールしてたんだよと打ち明けてみたんす^^
『ねえねえ夕実っち。これ見てよお^^』
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(※JACAR“アジア歴史資料センター”Ref.A07062083300、記録材料・陸軍行政報告書“国立公文書館”から引用
教授3さん資料提供ありがとうございます!)
スマフォの画面に映し出したのは明治22年の陸軍行政報告という官報みたいなものかな?
昔の文章がバババッと羅列しているのを見た夕実っちは
『ええっ!? な、なんなんですかコレ???なんかすごく古そうな資料?っぽいですう^^;』
と驚きと困惑の表情を浮かべた。
ーーー狙いはバッチリだ。
一旦腰を引かせるのが策でもあったしね^^
そして私は畳み掛けることにする。
『うんコレはね?廃村さーくるの教授さんにさっきメールしたんだよ~^^
ここの煉瓦と砲台は面白いです!って色々詳細を報告したら、
速攻、この夏島に関する資料の添付つきでお返事が返ってきたのだ^^』
『ええ!?教授さんとメールのやりとり???』
『ふふふ、そうなのだよ夕実っち。実は教授さんは煉瓦研究にも関心をもっていてねえ、
ひょんなことから煉瓦施設に何度か随伴させてもらってたりするのだ^^
一応わたし達の廃村さーくるの顧問ではあるけれど、その実どちらかと言うと古煉瓦派だったりするっすw
その他にも坂道や隧道、戦争遺構と多岐にわたる研究者でもあるんだあ^^』
その後も延々と夕実っちに教授さんはどうだとかこうだとか、一緒にどこどこ行ったんだよとぶちまける。
『琴音っちと教授さんがサークル以外で行動してたなんて知らなかったですう^^; 正直驚きぃ^^;』
彼女はひたすらビックリしていた。
そりゃそうだ。
お兄ちゃんたちとの廃村さーくる活動以外で、個別に教授さんと煉瓦研究してたんだしね。
ここで私は少し間を置き、鼻から空気を吸い込んで深呼吸。
そして神妙な面持ちをしてみせつつ『本当のこと』を彼女に打ち明けることにした。
『夕実っちい。実は私ね?お兄ちゃんというか部長が大学を卒業したらばーーー
廃村サークルを辞めようと思ってるんだ』
私の言葉に夕実っちは『・・・ッ!?』と声にならない驚きを見せる。
そしてしばらくしてからようやく声を出してくれた。
『・・・ええっとお・・・琴音っち、、、そんなの寂しいよおお・・・。
この先も琴音っちが居れば廃村サークルは続けられると思ってたのにい・・・。
実は私、菅原先輩があと一年で卒業なんだなあと思ってから不安だったんだ。
不安で不安で仕方が無かったんだ。
大好きな先輩が立ち上げたサークルだった。
ほんとうは廃墟なんかには全然興味なくって、先輩と一緒にいられるならと入ったサークルだったし。
でもでもでもね?
怖いこともいっぱいあったけど、廃村サークルが今は大好きになってたんだよ!
みんなでどこどこに行こうかと模索する時間や、行った先々での思い出とか、全部が全部素敵な時間だった。
このまま永遠に時が続けばいいと本気で思った。
・・・でも、正直わたしには先輩の卒業後はどうなるのか分からないとも思ってた。
でも、大好きな先輩が残してくれたこの廃村サークルは、私が卒業するまではせめて残したいとも思ってたんだよお?
・・・そこには琴音っちがいつもいるもんだと思ってた。
それなのに・・・それなのに・・・うう・・・ウエーン・・・』
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彼女は途中から本気で泣きだしてしまった。
ツアーのみんなも『え?何があったの?』と驚き振り向く。
私は『ええまあ、ちょっと色々で^^;』と、まったく誤魔化しきれない感じで取り繕った・・・
ここまで廃村サークルを好きだったとは。
彼女が好きなうちのお兄ちゃんが作ったサークルだとは言ってもここまでだったとは・・・
謀略を企てた私の心に彼女の涙の槍が幾重にも突き刺さる。
---いくらか落ち着いたのだろうか
再び彼女は口を開こうとしたのだが、うまく頭が回らないのか
『あ・・・えっと・・・えと・・えとえと・・・』と先の言葉が中々出てこなかった。
私はここで申しわけ無さそうに自分の言葉を告げることにした。
『驚かせてごめんね夕実っち・・・。さっきは辞めるって言ったけどォ、
正確に言うとね?
私は廃村サークルを古煉瓦研究主体のサークルに作り変えようかなって思っただけなの^^
サークル名はそのまま。
でも、主に取り扱うのが煉瓦や戦争遺構にシフトするのもいいんじゃないかって勝手に考えてただけなの^^;
廃というジャンルの中の“ひとつ”に絞ってみるのも面白いんじゃないかってそういう話なんだ。
さっきも言ったけれど、煉瓦方面なら教授さんの協力・助力も多分に仰げるしね^^
漠然と廃墟や廃なものを求めるのではなく、
少し方向性というかコンセプトを持った方がより良いんじゃないかって・・・てへへ^^;』
・・・とうとう打ち明けてしまった。
私が廃村サークルの今後はどうしようかと思っていたことを言い切った。
いや彼女に打ち明けるのが今日の最大の目的。
そのための下地が今日の羽田の煉瓦堤防や夏島ツアーだったんだから。
ツアーのみんなが次への場所へと移動を開始する。
私と夕実っちは少々遅れ気味にその後列へと続いた。
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やってきたのは、この夏島ツアー最後の見学場所『観測所跡』
そこは小さなやぐらのような鉄塔と、その脇にあるーーー
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半分土に埋もれた『観測所付属室』だった。
ここまでの道程、彼女は無言のまま。
私も特に声を掛けることもなく、ただただ傍に居て巡っているだけだった。
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『無事、夏島ツアーを終えることが出来てホッとしています^^
私の至らないところもあり、果たして皆さんに夏島の魅力を伝えきれたかどうか不安です。
本日はこの夏島貝塚を巡るツアーに参加していただきありがとうございました^^
またの機会がありましたら是非ともよろしくお願いいたします^^』
そう言って深々と頭を下げるガイドさんの言葉でツアーも終ることになった。
皆からは『こちらこそありがとうございます!』という感じで大きな拍手でガイドさんを労った。
帰りは徒歩で来た道を帰るのではなく、近場のバス停からそれぞれの帰路へとつくことに。
バス停に辿り着いてバス待ちをする私と夕実っち。
そこでようやく彼女は口を開いてくれるのだった。
『琴音っちの・・・案・・・。私は・・・いいと思うよ^^
先輩の作ったサークルが残るなら、それでいいと思う。
何より琴音っちがいないと調べ物とか私じゃ無理だしね^^;』
・・・良かった。
何が良かったって許可を貰ったとかじゃなくって話をしてくれたから。
このまま友達としての関係が壊れてしまうんじゃないかと、そっちの方が怖かった。
---バスがようやくやってきた。
それに乗り込む私達。
私の前の一人用座席に座った夕実っちがふと振り返る。
『あとこれだけは言わせて? 友達なんだから、これから先、
私を騙すようなことは決してしないこと^^ ね♪』
『うん。ゴメンナサイ』
『あともうひとつ。今日の晩御飯は琴音っちの奢りだからね☆』
『ですよね~w』
とはいえ帰りの車中ではいつもの夕実っちと私に戻れることが出来てよかったっす^^
※ここまで長々と読んでくださりありがとうございました^^
夏島編はいかがだったでしょうか?
貝塚・近代遺跡・戦争遺構。そして今後の廃村さーくるシリーズに大きく関わってくるであろう『煉瓦』
このかつて島だった小さな小さな小高い丘にはたくさんの歴史・物語が詰まっています。
少しでも夏島の魅力が伝えられたのなら嬉しいですね^^
ではでは次回は『Re:』の物語です。
ボクとしては初のリベンジ編となるでしょうかね?
気になる方は見てくださいね^^