
移動遊園地で曲芸バイクショーをしながら各地を巡り、その日暮らしの気ままな生活を送る孤独な天才ライダー、ルーク。ある日、かつての恋人ロミーナと再会した彼は、彼女が自分との子どもを密かに生んでいたことを知り、根無し草生活から足を洗うことを決意する。しかし職探しは上手くいかず、母子を養うために銀行強盗に手を染める。そんなルークを、正義感にあふれる新米警官エイヴリーが追い詰めていく。15年後、何も知らないルークの息子ジェイソンとエイヴリーの息子AJは高校で出会い、すぐに仲良くなるのだが…。(allcinema解説より) 子どものために罪を犯すルークをライアン・ゴズリングが、事件によってヒーローとなるも罪悪感を抱いて生きるエイヴリーをブラッドリー・クーパーが演じている。まずルークに焦点を当て彼の人生が描かれ、その後エイヴリーの物語になり、15年後の彼らの子ども達の物語になる。この3段階の構成が斬新で、それぞれの人物に視点が移るので何だか不思議な感覚でした。 息子を繋ぎ止めるために強盗を繰り返すという愚かさには決して共感できないが、ルークのまっすぐな不器用さには胸が締め付けられる。体中に入れた子どもの落書きのようなタトゥーも彼の置かれた境遇の哀しさを物語る。ライアン・ゴズリングは「ドライヴ」でもそうだったが、表情や動作が何とも言えない切なさを感じさせる人だと思う。孤独なライダー、ルーク役にぴったり嵌っていました。 最初にルークの物語が丁寧に描かれたことで、その哀しさが後の物語にずっと引き継がれて行くようでした。因縁の相手エイヴリー、そしてそれぞれの子の物語へと。親の愛、子の愛が、感傷的にならず自然な流れで示唆されていて、静かに心に響くものがありました。アイスクリーム、写真など小道具のさりげない使い方が上手い。そして、余韻の残るラスト。このための映画の構成だったのかと納得です。“the pines”は“松林”だと思うが、タイトルの意味を考えると改めて感動が蘇ります。
