金曜日、都立美術館の「レオナルド・ダ・ヴィンチ 天才の肖像」を見てきました。
ダ・ヴィンチの油絵は1点のみだし、素描や、レオナルドの追従者たち(レオナルデスキ)の作品、と言われても良く知らないし、大きな期待は抱かずに勉強のつもりでした。
結果としては、彼のスケールの大きさを実感できる、絵画展というよりは"ダ・ヴィンチ展”というべき催事で、けっこう満腹感がありました(笑)
ロンバルディア地方のレオナルド派の画家《貴婦人の肖像》1490年頃
テンペラ、油彩/板
金曜日朝の京都は快晴、テレビでは東京も晴れの予報だったので、梅雨の合間の富士山を期待したのですが、浜松あたりまで晴れだったものの、静岡を過ぎると梅雨空に…。やっぱり富士山の存在は気候にも影響大ってことなんでしょう。
夕方、仕事を終えて上野へ。先週行ったラファエロ展はこの日もチケット売り場に行列ができていました。もう一度、ラファエロを見てみたい衝動に耐えて、都美へ…
途中、こんな催しやってました。
どれも見事な咲きっぷり。こんなにたくさん集まっているのを見たことありませんでした。きっと愛好家の方にとっては、ビッグイベントなのでしょうね…。
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国立科学博物館では、『グレートジャーニー 人類の旅』が開催中。これもちょっと気になってるんですが…
岡村君が猿人のモデルになったというのが、話題になってましたね。360万年前の猿人の顔の表情の参考にされたとか…。これも見てみたい衝動に駆られながらも都美へと急ぎました。
地味な企画だけあって、ラファエロ展のような喧噪は都美にはありませんでした。これなら比較的ゆっくり見られそうです。
今回の展示会でダ・ヴィンチの絵はこの一枚だけ。そして真筆かどうかは議論があるとも聞いています。そもそもダ・ビンチの絵は15点程度といわれるほど少ないし、絵画展としてのダ・ビンチ展の成立は、どう考えても難しいわけです。
その中の一枚が日本に来ているわけですから、昨年のフェルメールじゃないですけど、もっと前面に出してもいいようにも思えますが、今回のダ・ヴィンチ展はそうしたところがあまり感じられません。でも今回のダ・ビンチ展、その点に僕は好感持ちました。
『音楽家の肖像』、1485年頃(諸説あり)、アンブロジアーナ図書館
今回、一番興味深かったのは、「アトランティコ手稿」と呼ばれる、ダ・ヴィンチのスケッチ。
今回は22点が展示されていました。その中にはデッサン、光や影を考察したもの、そして、飛行装置や可動橋の設計図、また武器のスケッチなどもありました。芸術だけでなく、土木建築や武器の技術、軍事論に適った城のレイアウトなど、彼の知的好奇心のスケールの大きさを見たときに、彼にはもっと時間が必要だったんじゃないかと思いました。
これは連続して矢を放つ機械。人がよじ登ることで歯車がまわり、その動力で弓矢が自動発射されるというもの。
光の通り道と影の出方を考察したもの
たとえば上の手稿。ダ・ヴィンチが自然をよくよく観察し、自分の目で見たものを絵画に構成しようとした努力の跡を見ることができたのは新鮮でした。実証主義というか自然科学的な立場に立ちながらも、芸術的にすばらしい作品を残したダヴィンチはやはり天才です。
ダ・ヴィンチの手稿をゆっくり見て、けっこう満腹になりました。見終わったあとに、じわじわと浮かんできたのは先週見たラファエロのこと。ラファエロ展を見終わった後の感想は、よく言えば謙虚に(悪く言えば計算高く)他者に学ぶ人だなという印象を受けたのですが、今回のダ・ヴィンチ展を見終えて感じたのは、情熱的すぎる芸術家ミケランジェロと、冷静で実証主義的なダ・ヴィンチ、やっぱりラファエロは、結果的にはこの二人のいいとこ取りをしたんじゃないかなってこと。そして、対照的な両者の良いところを、嫌味なく自分のものにできたというところが、ラファエロの凄さなんだっていうことが、僕の中では確信になりつつあります。
秋にはミケランジェロ展もあるようですね。(今は福井で開催中だということを今回知りました。行ってこようかな…) いずれにしても、今年はルネッサンスの三大芸術家のことを、もう少し深く知るいい機会になりそうです。